寡婦年金と死亡一時金

さて、以前の記事で遺族基礎年金の説明をしましたが
 
今回は、国民年金の遺族給付の残り2つです。
この2つは単に遺族補償というだけでなく
保険料の掛け捨て防止のための給付という意味合いがあります。

寡婦年金

寡婦年金とは、妻だけが受け取れる年金です。
残念ながら妻が死亡しても夫は受給できません
 

支給要件

①死亡日の前日において
 死亡月の前月までに第1号被保険者として
 保険料納付済期間+保険料免除期間が10年以上ある夫が死亡
②夫が年金を受給したことがない(老齢、障害)
③夫の死亡当時、生計を維持されていた
④夫との婚姻関係(内縁関係でも可能)が10年以上継続していた
⑤妻の年齢が65歳未満
 
①~⑤すべて満たす必要があります。
*第1号被保険者とは、国民年金だけ加入している人のこと。
 自営業者やフリーター、無職の人です。



支給期間

妻の年齢が60歳~65歳未満まで
期間限定になります。
 
支給額
夫が死亡した月の前月までの分で老齢基礎年金額を計算して
その額の4分の3が支給されます。
夫がもらえるはずだった老齢年金の4分の3というとわかりやすいでしょうか?
 
例えば10年間、保険料を納付していたとすると
1年間に約195,000円✖4分の3=約146,250円支給されます。



権利が消滅してしまう場合

①65歳になった時
②死亡した時
③婚姻(内縁も含む)した時
④赤の他人の養子になった時
⑤自分の年金を繰り上げて受給した場合

死亡一時金

 

支給要件

①死亡日の前日において
 死亡月の前月までの第1号被保険者期間において
 保険料納付済期間と保険料免除期間が合わせて36月以上ある
 ②年金(老齢、障害)を受給したことがない
 
*①、②共に満たす必要があります。
 
 

受給できる遺族

死亡した者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹のうち
生計を同じくしていた者
*優先順位もこの並び順です。
 
 

支給額

まず、保険料納付済期間は、そのまま1ヶ月と数えますが
   免除期間については4分の3免除→4分の1月
              半額免除→2分の1月
            4分の1免除→4分の3月と数えます。
 *全額免除された月は1円も払っていないのでカウントしません。
 
保険料納付済期間+免除期間の合算によって以下のようになります
36~180月未満・・・・120,000円
180~240月未満・・・145,000円
240~300月未満・・・170,000円
300~360月未満・・・220,000円
360~420月未満・・・270,000円
420~      ・・・320,000円

併給調整 

 

寡婦年金を受給する場合は死亡一時金の権利は消滅します。
逆に死亡一時金を受給すると寡婦年金の権利が消滅します。
どちらか一方しか受け取れません。
 
遺族基礎年金と寡婦年金は同時に受給はできませんが
遺族基礎年金を受け取り終わった後に寡婦年金を受給することは可能です。
 
遺族基礎年金と死亡一時金の権利が同時に発生した場合は
遺族基礎年金が優先支給されて死亡一時金の権利は消滅します。
 
これらをまとめてみます
【いずれか一方だけ】
寡婦年金・・・死亡一時金
寡婦年金・・・死亡一時金 
【時期が被らなければ両方を受給可能。被った期間は一方を選択する】
遺族基礎年金・・・寡婦年金
【優先支給】
遺族基礎年金・・・死亡一時金
 
 

併給調整で気を付けたいこと

ここで、ちょっと考えてみると
夫が10年間保険料を納めて亡くなった場合
妻は寡婦年金と死亡一時金のどちらも権利が発生します。
 
この場合、寡婦年金の支給額でもふれましたが
上記の例で言えば寡婦年金は年間に約146,250円
60~65歳まで最長5年間もらえます。
 
それに対して死亡一時金は1回切りな上に
10年=120月なので120,000円しかもらえません。
 
そりゃ寡婦年金を受給するほうが得だよね~って。
実は、そうとも限りません。
 
寡婦年金を受給中は他の年金は受給できません。
死亡一時金も権利が消滅するので
60~65歳の期間、寡婦年金のみです。
 
でも、遺族厚生年金が受給できる場合・・・
遺族厚生年金+死亡一時金>寡婦年金というケースは多いです。
 年金事務所でよく確認して選択をミスらないよう注意して下さいね。 


 


SK社会保険労務士・行政書士事務所

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